コーヒー精製方法の違い|3つで味はこう変わる
コーヒー精製方法の違い|3つで味はこう変わる
コーヒーの精製とは、収穫したチェリーから生豆を取り出して乾燥させる工程であり、ウォッシュド・ナチュラル・ハニーの違いは、果肉と粘液質をいつ外すかという一点に集約されます。年間200種以上のカッピング記録を見返しても、産地や品種で並べたときより、精製方法で並べたときのほうが味の傾向は驚くほどきれいに揃いました。
コーヒーの精製とは、収穫したチェリーから生豆を取り出して乾燥させる工程であり、ウォッシュド・ナチュラル・ハニーの違いは、果肉と粘液質をいつ外すかという一点に集約されます。
年間200種以上のカッピング記録を見返しても、産地や品種で並べたときより、精製方法で並べたときのほうが味の傾向は驚くほどきれいに揃いました。
同じエチオピア・イルガチェフェでも、ウォッシュドとナチュラルを並べて淹れると、隣の家族が「別の飲み物だと思った」と言うほど表情が変わります。
豆袋の隅に小さく書かれたその表記こそが、実は産地名と同じかそれ以上に味を左右しているのです。
味の差を生む主因は発酵で、粘液質の糖分と微生物が触れる時間が酸味、甘み、ボディ、クリーンカップを決めます。
ここを追えば十分で、酸味のクリアさを取るとボディは軽くなり、厚いボディを取ると酸味は丸くなる、その軸の上にウォッシュド、ハニー、ナチュラルが順に並びます。
この記事ではウォッシュド・ナチュラル・ハニーの3方式だけに絞って比較し、アナエロビックなどはその先にある派生として最後に触れます。
まずは自分がどこまでクリアな酸味を求めるか、どこまで厚い甘みとコクを求めるかを決めてみてください。
【結論】好み別・精製方法の早見表
精製方法の違いは、収穫したチェリーの粘液質をどこまで残すかで決まります。
酸味のクリアさとボディの厚さはきれいに両立せず、ウォッシュド、ハニー、ナチュラルの順に輪郭はやわらぎ、甘みと厚みが増していきます。
ここではこの3方式だけを比較し、アナエロビックなどの派生はあとで触れる前提にそろえます。
こんな人はこの精製方法を選べばいい
紅茶のような軽さとレモンのような酸味が好きならウォッシュドです。
ベリージャムのような甘さと厚みを求めるならナチュラル、甘いのに重すぎない着地点を探すならハニーが合います。
何を選べばいいか全くわからないなら、基準点になるウォッシュドから始めると迷いが減ります。
実際、初めてナチュラルを買った人から「発酵臭がして飲めなかった」と相談を受けたことがあります。
好みを聞くと紅茶党だったのでウォッシュドを勧めたところ、そのまま定着しました。
香りの派手さよりも、まず自分がどの輪郭を心地よいと感じるかを決めるほうが早いのです。
3方式の違いが1分でわかる比較表
| 精製方法 | 工程の要点 | 酸味 | 甘みとボディ | 主な産地 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウォッシュド | 果肉と粘液質を分離し、水槽で12〜72時間発酵させて洗い流す | 明るい、シャープ | 軽やか、クリーン | 中南米・東アフリカ・ハワイ | 紅茶のような軽さ、レモンのような酸味が好きな人 |
| ハニー | 果肉のみ除去し、粘液質を残したまま乾燥させる。残存率でホワイト90%・ゴールデン75〜85%・イエロー50%・レッド25%前後・ブラック0%に分かれる | 穏やか、角が立ちにくい | 甘みとボディのバランスがよい | コスタリカ | 甘いが重すぎない中間を求める人 |
| ナチュラル | 果実を付けたまま2〜4週間天日乾燥させる | 丸く穏やか | 厚い、シロップ様 | ブラジル・エチオピア・イエメン | ベリージャムのような甘さと厚みが好きな人 |
産地の手がかりも見逃せません。
ウォッシュドは中南米・東アフリカ・ハワイ、ナチュラルはブラジル・エチオピア・イエメン、ハニーはコスタリカが中心です。
産地表記を見ただけで精製方法を推測できる豆もあり、買い物の目線が一段上がります。
迷ったらウォッシュドから始める理由
ウォッシュドが基準点になるのは、産地と品種の個性が最もストレートに出るからです。
焙煎を始めた最初の2年はウォッシュドしか買わず、そこで味の骨格を体に入れてからナチュラルに手を出したことで、違いが驚くほどはっきり見えました。
先に軸を作ると、その後の比較が楽になる。
これは回り道に見えて、実は近道です。
抽出でも考え方は同じで、浅煎りはウォッシュドの酸味、中深煎りはナチュラルの甘みと噛み合いやすい流れがあります。
まずはウォッシュドで自分の基準を決め、そこから「もっと甘く、もっと重く」と振っていけばハニー、ナチュラルへ進めます。
3方式の中でどこに自分が立つかを決めれば、選択はそこで終わります。
精製方法で味が変わる仕組み|果肉・粘液質・発酵の3要素
コーヒーの精製は、収穫したチェリーから生豆を取り出し、保管できる状態まで乾燥させる工程です。
外側から果肉、粘液質、パーチメント、生豆の4層でできたチェリーを、どこで、いつ外すか。
その違いがウォッシュド、ハニー、ナチュラルという名称になり、味の輪郭まで決めていきます。
コーヒーチェリーは4層構造でできている
果肉の下にある粘液質は、糖分を含む粘着質の層です。
生豆の仕入れ時にサンプルのパーチメントを剥き、この粘液質の残り方を指で確かめると、カップに出る甘さの予測がかなり当たるようになりました。
収穫直後のチェリーをかじったとき、想像以上に糖度が高く、この甘みが精製の途中でどう移るのかを知ることが、理解の近道だと腹落ちしたものです。
味の差を生んでいるのは発酵である
3方式を分ける分岐点は、実は粘液質の扱いだけです。
これを全部落とすのがウォッシュド、一部残すのがハニー、果肉ごと付けたまま乾かすのがナチュラルで、対応さえ覚えればあとは派生にすぎません。
違いを味に変えている主因は発酵で、粘液質の糖分が微生物に触れる量と時間が、酸味の立ち方、甘み、複雑さ、クリーンカップを左右します。
だから精製方法とは、発酵量をどう設計するかという作業なのです。
果実との接触時間が長いほど甘くなる
果実との接触時間が長いほど、甘みとボディは厚くなります。
ウォッシュドは果肉を外したあと水槽で12〜72時間ほど粘液質を分解し、洗い流してから乾燥へ進むため、酸味が明るくシャープに立ちやすく、産地や品種の個性が見えやすい仕上がりになります。
ナチュラルは果実を付けたまま2〜4週間天日乾燥させ、その間に糖分が生豆へ移りながら発酵が進むので、ベリーやトロピカルフルーツを思わせる厚みが出るわけです。
新しい精製名に出会ったら、まず「果実をどれだけ長く付けているか」を見てみてください。
味の方向が読めるようになります。
方式が違っても、最終的なゴールは同じです。
含水率12%以下まで乾燥させ、保管中の劣化やカビを防ぐこと。
この共通点を押さえると、違いは仕上がりまでの道筋だけだと分かりますし、乾燥期間の差が後の各論で効いてくる理由もつかみやすくなります。
ウォッシュド|クリアで明るい酸味が出る理由
ウォッシュドは、選別したチェリーから果肉を機械で外し、水槽で12〜72時間ほど発酵させて粘液質を分解し、その後に水洗・乾燥・脱穀・選別へ進む精製です。
果実の糖分や粘液質を先に落としておくため、豆の表面に発酵由来の風味が乗りにくく、雑味の少ないクリーンカップと、明るくシャープな酸が前面に出やすくなります。
味を足す精製ではなく、産地と品種の素性をそのまま見せる方式だと考えると、シングルオリジンの飲み比べに強い理由も腑に落ちるでしょう。
水槽発酵12〜72時間で粘液質を分解する工程
工程は、まず熟度や欠点豆を選別し、果肉除去機でチェリーの果肉を剥き、残った粘液質を水槽で12〜72時間かけて発酵させる流れです。
この時間のあいだに粘液質が分解されることで、豆の表面からぬめりが抜け、水で洗い流したときに余計な糖分が残りにくくなります。
水洗の後は乾燥、脱穀、最終選別へ進みますが、最初の発酵管理でどこまで整えるかが、のちのカップの輪郭を決める起点になります。
水槽内で発酵を管理できるため、ロットごとの差を抑えやすいのもこの方式の持ち味です。
雑味が少なく酸味が際立つ味わいの理由
粘液質をきれいに落とすほど、果実由来の発酵風味が生豆に移る余地は小さくなります。
その結果、焙煎で生まれた香味が濁りにくく、舌の上では酸味の立ち上がりが速く、輪郭もくっきり感じやすい。
筆者が同じケニアの豆で発酵時間の異なる2ロットを焙煎したときも、長時間側は酸の輪郭がわずかにぼやけ、発酵時間が味に直結することをはっきり実感しました。
浅煎りのウォッシュドを湯温94℃で淹れた際にはレモンのような酸が最も伸び、90℃ではまだ硬さが残ったので、精製の差が抽出のしやすさにもつながると感じます。
なお、ウォッシュドの個性は薄まるのではなく、産地・品種の個性がむしろそのまま表に出るところにあります。
水を大量に使うため設備と水資源が必要ですが、そのぶん品質管理の軸がはっきりします。中南米、東アフリカ、ハワイで主流なのも、こうした管理のしやすさと無関係ではありません。
ウォッシュドが向いている人
向いているのは、クリアで軽やかな飲み口を好む人です。
紅茶や緑茶のように、香りの層と後味のきれいさを楽しむ飲み方に慣れているなら、ウォッシュドの良さはすぐにつかめます。
毎日飲んでも飽きにくい基準の1本を探している人にもおすすめですし、シングルオリジンの飲み比べで産地や品種の違いを学びたい人には、最も勉強しやすい精製と言えるでしょう。
まずは浅煎りから試し、温度を少し振って淹れてみてください。
すると、同じ豆でも酸の出方が変わる理由が体感しやすくなります。
ナチュラル|果実味とボディが厚くなる理由
ナチュラルは、収穫したチェリーを果肉や粘液質を付けたまま天日で2〜4週間かけて乾かす精製です。
水をほとんど使わず設備も簡素で、コーヒーの最も古い方法の一つとして受け継がれてきました。
ウォッシュドより工程日数が長く、そのぶん果実の成分と発酵の影響が豆に残りやすいのが特徴です。
甘く華やかな果実味を求める人、ブラックでも甘さを感じたい人、コーヒーに個性や驚きを求める人にはおすすめです。
果実ごと2〜4週間乾かす工程
収穫したチェリーをそのまま広げ、果肉も粘液質も付いた状態で2〜4週間、天日にさらしながら乾燥させます。
ブラジル、エチオピア、イエメンで主流なのは、乾季が明確で天日乾燥に向いた気候と、水資源を節約したい事情が重なっているからです。
乾燥棚の上でムラなく水分を抜くには手間がかかりますが、機械と水に頼らず味をつくれるのがナチュラルの強みでしょう。
ベリーやワインのような風味が生まれる仕組み
乾燥のあいだに果実の糖分が生豆へ移り、自然発酵がゆっくり進みます。
この過程で、ベリー、トロピカルフルーツ、ワインのような香りが立ちやすくなり、甘みとボディが厚くなります。
酸味は鋭さよりも穏やかさが前に出て、シロップやジャムを思わせる丸い質感に寄ります。
エチオピアのナチュラルを浅煎りで攻めすぎて発酵感だけが突出したことがあり、中煎りまで落として初めてベリーの甘さが素直に出ました。
焙煎で輪郭を整えると、この精製の持ち味はぐっと見えやすくなります。
ロットによる品質差が出やすい注意点
果実を付けたまま乾かすぶん、管理は難しくなります。
乾燥ムラ、カビ、過発酵が起きると、きれいな果実味ではなくネガティブな発酵臭や雑味に転びやすく、3方式の中でもロット差が最も大きい精製です。
同じ農園のナチュラルを2年続けて買ったとき、乾燥期の天候が悪かった年のロットは明らかに雑味が増えていました。
だからこそ、乾燥棚(アフリカンベッド)での管理や生産者情報が明記された、素性のはっきりした豆を選ぶのが失敗を減らす近道です。
まずはこの見極めを押さえましょう。
ハニープロセス|粘液質の残存率で5段階に変わる
コーヒーチェリーは外側の果肉、その下の糖分を含んだ粘着質の粘液質、さらに内側のパーチメントと生豆が重なった構造です。
精製とは、この果実から生豆を取り出して乾燥・保管できる状態にする工程であり、ハニープロセスは果肉だけを外し、粘液質を残したまま乾かす中間形にあたります。
ウォッシュドの水洗を省きつつ、ナチュラルほど果実感を強く残しすぎないため、両者の性格をつなぐ方式として理解すると整理しやすいでしょう。
粘液質を残す割合で決まる5段階
ハニーは単一の製法ではなく、粘液質をどれだけ残すかで味が変わるグラデーションです。
残存率の目安は、ホワイト90%、ゴールデン75〜85%、イエロー50%、レッド25%前後、ブラック0%という5段階で、乾燥後の色合いがそのまま名前になっています。
扱う層が同じでも、どこまで削るかで発酵の進み方が変わり、同じ農園の豆でも表情が大きく分かれるのが面白いところです。
ホワイトからブラックまで味はどう変わるか
残す粘液質が多いほど発酵と糖分移行が進み、甘みとボディは増していきます。
ホワイトはウォッシュド寄りのすっきりした甘さで、イエローは輪郭と厚みの釣り合いがよく、レッドになると旨味がぎゅっと凝縮します。
ブラックは最も甘くワイニーで、ナチュラルにかなり近い印象になります。
コスタリカのイエローとブラックを同時に飲み比べたとき、ブラックの粘つくような甘さにははっとしましたが、毎日飲むならイエローのほうが飲み疲れしにくく、基準を作りやすいと感じました。
ハニーの豆を浅煎りにしたときは甘さが奥へ引っ込み、中煎りに寄せて初めてキャラメルのような甘さが立ったので、焙煎ではこの層の個性をどう引き出すかが問われます。
ハニーに蜂蜜は使われていない
「ハニー」という名前から蜂蜜を加えていると思われがちですが、蜂蜜は一切使っていません。
乾燥中の粘液質が蜂蜜のようにベタつき、色づいて見えることに由来する名称です。
つまり、甘さの正体は添加物ではなく、果実由来の糖分が残った層とその発酵にあります。
いずれの方式も最終的には含水率12%以下まで乾燥させて保管品質を安定させるため、乾きにくいほど管理の手間とリスクが増え、ブラックハニーの価格が上がりやすい理由にもつながります。
向いているのは、ナチュラルの甘さに惹かれるが発酵感は苦手な人、ウォッシュドでは少し物足りなくなってきた人です。
まずはイエローハニーから試してみてください。
基準がつかみやすく、おすすめです。
3方式の味を4軸で比較する|酸味・甘み・ボディ・クリーンカップ
ナチュラル精製は、果実をつけたまま乾燥させる工程だからこそ、味わいに果実由来の厚みが乗ります。
チェリーごと2〜4週間かけて天日乾燥させるためウォッシュドより工程日数が長く、そのあいだ果実の糖分が生豆へ移り、ベリーやトロピカルフルーツ、ワインのような風味が立ち上がりやすいのです。
酸味は穏やかで丸く、同時に発酵の管理が難しいぶん、ロット差が出やすい精製でもあります。
酸味と甘みはどう振れるか
酸味の質で並べると、ウォッシュドは明るくシャープで、レモンや青りんごにたとえやすい輪郭が出ます。
ハニーはそこから少し角が取れ、オレンジのような丸みを帯びた印象になり、ナチュラルはさらに発酵感を含んだ、赤ワインに近い落ち着きへ寄っていきます。
甘みも同じ順番で変わり、ウォッシュドは繊細、ハニーは中程度、ナチュラルはシロップのように濃く感じやすい。
果実との接触時間が長くなるほど、味の情報量が増えていく流れだと捉えるとでしょう。
カッピング記録を精製方法で並べ替えたときも、この傾向はきれいに見えました。
酸味のスコアが上がるロットほどボディは軽く、ボディが厚くなるロットほど酸味は丸くなる。
数値で眺めると、酸と甘みと重さがばらばらに動いているのではなく、ひとつの設計思想として連動していることがわかります。
ボディとクリーンカップのトレードオフ
ボディで比べると、ウォッシュドは紅茶のように軽く、ハニーは中庸、ナチュラルは口中に残る粘性が強くなります。
クリーンカップはウォッシュドが最も高く、ハニーがその中間で、ナチュラルは発酵由来の風味が雑味と紙一重になりやすい。
ここは優劣ではなく、何を優先して設計したかの違いです。
クリアさを取るならウォッシュド、厚みを取るならナチュラル、両方の中間を狙うならハニーという見方が合っています。
エチオピア・イルガチェフェのウォッシュドとナチュラルを同一条件で並べて淹れ、ブラインドで知人5人に出したときは、全員が別の産地だと答えました。
実際には産地も品種も同じで、違ったのは精製方法だけです。
カッピングでも同じ傾向があり、酸味とボディのスコアは逆相関に近く並びました。
こうして見ると、精製は「後処理」ではなく、味の骨格を決める工程だと実感できます。
同一産地で精製違いを飲み比べる方法
違いをはっきり確かめるなら、同じ産地・同じ品種で、精製方法だけが異なる豆を2種類選び、同じ焙煎度、同じ湯温、同じ比率で淹れ比べるのがいちばんです。
変数を精製方法だけに絞れば、酸味の質、甘み、ボディ、クリーンカップの差がそのまま立ち上がります。
まずはこの方法で試してみてください。
難しい理屈を知らなくても、味の軸が見えてきます。
向いているのは、果実味の強いコーヒーが好きな人、厚みのある甘さを楽しみたい人、そしてロットごとの個性を飲み分けたい人です。
逆に、雑味の少ないクリアな味を軸に選びたいならウォッシュド、柔らかさと飲みごたえの両立を狙うならハニーが合います。
同じ豆とは思えないほど差が出るはずで、その差こそが精製方法が産地や品種に匹敵する味の決定要因である証拠になるでしょう。
精製方法に合わせた焙煎度と抽出の合わせ方
ハンドドリップはまず土台を固定すると扱いやすい。
粉15gに対して湯225〜250g、比率は1:15〜1:17、湯温は90〜94℃、抽出時間は2分30秒〜3分30秒に置くと、精製方法ごとの違いが見えやすくなります。
そこから焙煎度と湯温を少しずつ振るだけで、同じ豆でも輪郭と甘さの出方がはっきり変わるでしょう。
高価な器具より、精製方法に合った焙煎度を選ぶほうが味への影響は大きい。
まずは豆の選択で正解に近づき、抽出は微調整に留めるのが現実的です。
ウォッシュドは浅煎り・高めの湯温で酸味を活かす
ウォッシュドは浅煎りと相性が良く、クリアな酸がそのまま前に出やすい組み合わせです。
浅煎りはもともと酸味が際立つため、そこにウォッシュドの透明感が重なると、柑橘や白い花のような印象が素直に伸びます。
湯温は基準の上限寄りである93〜94℃に振ると、酸が硬く閉じず、輪郭だけがきれいに立ち上がるので扱いやすいです。
浅煎りウォッシュドを試すなら、この設定から始めるのが。
ナチュラルは中深煎りで甘みを引き出す
ナチュラルは中深煎りに寄せると、甘みとコクが出る領域と果実味が噛み合いやすくなります。
浅煎りに振りすぎると、ベリー感より先に発酵感だけが目立ちやすいので、湯温は90〜92℃とやや低めにして甘さを丸く出すほうがまとまりやすいです。
筆者は同じナチュラルを94℃と91℃で淹れ比べ、3℃下げただけで発酵感が甘さに転じるのを何度も確かめました。
ナチュラルを扱うなら、中深煎りと低めの湯温を軸にしてみてください。
味がぶれたときの調整手順
味がぶれたときは、調整方向を1つに絞るのが近道です。
苦みや渋みが出たら、挽き目を粗くするか湯温を2〜3℃下げると角が取れます。
逆に薄く感じたら、粉量を少し増やすだけで十分なことが多いです。
初心者に教える場面で挽き目と湯温を同時に変えてしまい、かえって迷宮入りさせた失敗があるため、以後は一度に1つだけ変えるルールを徹底しています。
ハニーは中煎り前後が扱いやすく、基準値のままでも中庸の甘さがきれいに出ます。
残存率が高いブラック寄りならナチュラル側、ホワイト寄りならウォッシュド側に寄せると判断しやすいでしょう。
まずは小さく動かして、違いを確かめてみてください。
【補足】アナエロビックなど発展型プロセスの位置づけ
アナエロビックやカーボニックマセレーション、スマトラ式のような表記は、3方式を覚えたあとに広がる「発展型の地図」として見ると整理しやすくなります。
どれも基本の精製法から派生した条件や応用であり、味の方向性が強く出るぶん、管理も手間も増えて価格帯が上がりやすいのが特徴です。
店頭で新しい名前に出会ったときも、まずは3方式の軸に重ねて読むだけで、情報の見え方が変わってきます。
アナエロビックは酸素を断って発酵させる
アナエロビック(嫌気性発酵)は、チェリーを密閉タンクに入れて酸素を遮断したまま進める発酵です。
酸素がある環境では働きにくい乳酸菌などが優位になり、通常のナチュラルでは出にくいスパイシーさや熟成感、輪郭のはっきりした複雑さが前に出ます。
筆者が初めて飲んだときも、コーヒーというより発酵飲料に近い印象で少し戸惑いましたが、3方式の基準が体に入っていたからこそ、そこに何が足されているのかを比較しながら理解できました。
アナエロビックは単独の精製法というより、発酵条件の設計に近い考え方です。
だからこそ、ナチュラルと組み合わせたアナエロビックナチュラルのような表記では、果実味の厚みの上に発酵感がさらに重なります。
ここを「別の新ジャンル」として切り離すより、「3方式の上に重ねる追加レイヤー」と捉えるほうが混乱しません。
カーボニックマセレーションも同じく発酵を強く制御する派生で、ワイン醸造由来の発想がコーヒーに移植されたものだと見ると筋が通ります。
スマトラ式のような地域固有の方式
スマトラ式(ウェットハリング)は、乾燥の途中で脱穀する地域固有の方式で、一般的な3方式とは別の土地の都合から育ったやり方です。
乾いた後に脱穀するのではなく、まだ水分が残る段階で処理するため、豆の質感は独特に重く、ハーブ感も出やすくなります。
筆者がマンデリンを深煎りで焙煎したときも、他産地の深煎りとは違う腰のある重さが出て、そこに青いハーブを思わせる風味が重なりました。
精製方法は味の好みだけでなく、その地域の気候と作業の合理性から生まれるのだと体で腑に落ちた経験です。
ここで見えてくるのは、地域や思想によって派生が生まれるという構図です。
アナエロビックもスマトラ式も、基本の3方式を置き換えるというより、その上で何を強め、どんな個性を残すかを設計した応用といえます。
だから新しい表記を見たときは、まず「これはナチュラル、ウォッシュド、ハニーのどこに近いのか」と考え、そこから追加の条件を読むと理解が速くなります。
まずは3方式を押さえてから広げる
発展型の精製法はどれも魅力的ですが、手間と管理コストがかかるぶん、価格帯が上がりやすく、日常使いというより「ご褒美枠」になりがちです。
だからこそ、最初から派生名ばかり追うより、まず3方式で自分の基準を作ってから広げるほうが、買うときも飲むときも迷いません。
店頭で気になるラベルに出会ったら、派生の個性を楽しむつもりで選んでみてください。
軸があると、珍しい表記ほど面白くなります。
自家焙煎歴12年。生豆の仕入れから焙煎プロファイル設計、抽出レシピの検証まで一貫して自分の手で行う。コーヒーインストラクター2級取得。年間200種以上の豆をカッピングし、再現性にこだわるレシピをお届けします。
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